19才の天才学生、「AI弁護士」で駐禁問題を解決

FUZE

世界初の「ロボット弁護士」を一人で作った、19歳の大学生ジョシュア・ブラウダー(Joshua Browder)はロンドン市民のヒーローとなりつつある。2016年夏、ブラウダーが公開した駐禁の異議申し立て支援チャットボット「DoNotPayは、多くのロンドン市民の手間と罰金の節約につながりメディアに大きく取り上げられた。

ボットの質問に回答することで自分の駐禁が異議申し立てが可能なものかを判断してもらうことができる。このボットシステムは、高額で時間制限のある弁護士の業務をボットが一部代替できることを証明したのである。しかも「DoNotPay」の利用は無料。ボットが爆発的に人気となったのも納得である。

現在までに成功した駐禁チケットの異議申し立てはなんと17万件。DoNotPay」によって免除された罰金は合計にして4億円ほどにまでのぼる。全てが弱冠19才のスタンフォード大学生が作ったボットによるものなのだ。

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image via Flickr

そんなブラウダーが「DoNotPay」に追加した次のアップデートは人道支援の領域まで踏み込む。それはホームレス問題に取り組む弁護士ボットだ。Ars Technicaが報じている。

ホームレスが直面する立ち退きや、担保に入れられた物件の差し押さえに巻き込まれて住む場所を失う人の数は今、イギリスでは記録的な増加を見せているという。条件さえ満たせればイギリス政府が供給する住宅サービスや救援制度に申し込むことができるのだが、自分が条件を満たしているのかの判断は弁護士に聞かないと分からない。その上、申請書類の記入も一般人には難しいというから、どうすれば助けが得られるのか、不安が募るばかりだ。

アップデートされた「DoNotPay」は、ユーザーに幾つかの質問を聞き、条件を満たしているかの判断を導き出してくれるというわけだ。さらに書類を記入して、必要であれば申請内容をサポートするための手紙まで書いてくれるというから素晴らしい。

DoNotPayの使い方を説明するビデオ

例えば、手紙を作り、精神病を患っていることからこの申請者は優先的に扱われるべきだ、といった内容を訴えることまで(ボットが)してくれる。しかもボットの利用は完全無料なんだ

ブラウダーはArs Technicaに語っている

アップデートされてから一週間以内に、イギリス内のほぼ全ての地方自治体の担当役所がウェブサイトに登録したという。彼ら自身が、このシステムを利用できるかどうか試しているようだ。ブラウダーはイギリスで最大規模のホームレス問題慈善団体である「センターポイント」で働くボランティアの弁護士たちと協力して「DoNotPay」が提供する法的アドバイスを開発してきたという。

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「火災保険に入っていない状態で、住んでいたアパートが火事になった」という状況

ブラウダーは次のプロジェクトとして、イギリスのシリア難民支援をボットで考えていると語っている。テクノロジーの力で、大規模に市民を救おうとするブラウダーの姿勢に、「ぶんぶんごま遠心分離器」や「折り紙顕微鏡」で命を救おうとするマヌ・プラカシュを連想するのは私だけだろうか。

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テクノロジーが変える社会、と言うと自動運転車や火星移住を想像してしまいがちだが、ホームレスなどの人道支援に見られる重要なインフラストラクチャー・サービスがボットとして安価に普及されることには大きな意義があるように思われる。

塚本 紺ライターNY在住フリーランスライター・翻訳家。ギズモード、Digiday.jpなどに執筆。

@Tsukamoto_Kon

スタンフォード大学1年生のジョシュア・ブラウダーは、チャットボットの開発を手掛ける起業家だ。現在19歳の彼はチャットボットには大きな可能性があると感じているが、フェイスブックメッセンジャーのボットは「全くつまらない」と切り捨てる。

彼が開発した「DoNotPay」(支払うな)はウェブベースのボットで、駐車違反切符に異議を申し立てたいドライバー向けのサービスだ。ロンドンで昨年9月に、ニューヨークで今年3月にリリースして以来、これまでに25万件の異議申し立てを行い、16万件の違反の取り消しに成功している。

「僕は18歳で運転免許を取得して以来、駐車違反切符をたくさん切られてしまった。異議申し立てをしているうちに、友達の分も手伝うようになった」とブラウダーは話す。

彼はボットを作ってチャット形式で友人やその家族に異議申し立てをするためのプロセスを教えることを思い付いたという。DoNotPayはアドバイスだけに止まらず、当局への嘆願書を作成することも可能だ。

ブラウダーはこのボットを高校卒業後の3か月で完成させたという。サイトをオープンすると、数千人からのアクセスが集まった。「これほど多くの人が利用するとは全く想像していなかった」とブラウダーは話す。彼はロンドン北部のヘンドン出身で、現在はスタンフォード大学で経済学とコンピュータサイエンスを学んでいる。

12歳の時にユーチューブ動画を見ながらコーディングを独学で学び始め、6年前からiOSアプリを開発しているブラウダーは、アプリ作りをはじめてすぐにイギリスのカフェチェーン「Pret A Manger」の公式アプリを開発し、同社に売却することに成功したという。その後、Freedom Houseをはじめとする人権団体向けのアプリの開発を手掛けた。Freedom Houseは米最古の人権団体で、報道の自由度に関するレポートを公表していることで知られている。
人権団体向けのアプリを作り始めたきっかけについてブラウダーは次のように話す。「世の中には人権侵害が横行していて、何かできないかと考えたんだ」。

こうした活動を通じて知り合った人権問題専門の弁護士たちが、ボット開発の見返りとしてアドバイスをくれたのだという。「分からないことがあれば、彼らはいつでも対応してくれる」とブラウダーは話す。彼はコーディングをしていない時間はDoNotPayを利用できない人々とメールでやり取りをしてサポート活動を行っているという。

ブラウダーは現在、シリアなどからの難民向けに難民申請書類の作成を支援するボットを開発中だ。ボットはアラビア語に対応し、英語で書類を作成することができる。リリースは9月を予定しているという。

DoNotPayは大成功を収めるようなテクノロジー企業ではないかもしれないが、盛り上がりを見せるチャットボットの中で注目に値するサービスであることは間違いない。

今年の初めにテクノロジー系メディアはボット時代が到来し、アプリは終焉を迎えると騒ぎ立てた。しかし、フェイスブックメッセンジャーなどが率先して取り組んでいるブランドボットへの評価はこれまでのところ二分しており、どれだけの人が実際に利用しているのかは不明だ。

バンガロールに本拠を置くボットメーカー、Tarsのエンジニアであるアーナブ・パテルは最近Mediumで次のように投稿し話題になった。「チャットボットは万人向けではなく、開発者たちは消費者に魅力に感じてもらうために試行錯誤している」

DoNotPayは、ブラウダーのようにボットの収益化にこだわらない開発者にとっては興味深い活用事例となった。「世の中はボットブームだが、今のところはコマース向けの低品質なものばかりでがっかりしている。ボットにはもっと大きな可能性があり、世の中に大きなインパクトを与えることができるはずだ」と彼は話す。

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